KPMベルリンとは?|フリードリヒ大王が育てた王立磁器とマイセンとの違い

KPMベルリンとは

ドイツの磁器というと、まずマイセンを思い浮かべる方が多いと思います。

けれどドイツには、もう一つ王室と深く結びついた名窯があります。

それが、KPMベルリンです。

正式名称は
Königliche Porzellan-Manufaktur Berlin
日本語では「王立ベルリン磁器製陶所」と訳されます。

マイセンがザクセン王侯文化の磁器なら、KPMベルリンはプロイセン王室とベルリン文化を象徴する磁器と考えると分かりやすいでしょう。

今回は、KPMベルリンがどのように生まれ、なぜ今も高く評価されているのかを見ていきます。


目次

KPMベルリンの始まりは1763年

KPMベルリンが正式に誕生したのは1763年です。

それ以前にもベルリンでは磁器製造への挑戦が続けられていましたが、経営はなかなか安定しませんでした。

そこで工場を買い取ったのが、プロイセン王フリードリヒ2世、いわゆるフリードリヒ大王です。

彼は製作所に「王立」の名を与え、さらに王家の象徴である王笏(セプター)を商標として使わせました。KPM公式も、1763年にフリードリヒ大王が製作所を取得・創設し、王笏マークを与えたとしています。


王様自身が一番のお客だった

面白いのは、フリードリヒ大王自身がKPMの大顧客だったことです。

KPM公式によると、彼は自分の宮殿用に21もの食器セットを注文し、中には500点近い大規模なサービスもありました。さらにKPMの磁器は、国家間の贈答品としても使われています。

つまりKPMは、単なる高級食器メーカーではなく、

プロイセン王室の文化と外交を担う磁器製作所

でもあったわけです。


イメージ画像

これはイメージ画像です。実際の商品とは関係ありません。

 


マイセンとの違いは?

マイセンとKPMはどちらもドイツを代表する名窯ですが、成り立ちは少し違います。

マイセンは、ヨーロッパで硬質磁器を作ることに成功した“磁器そのものの誕生”に近い存在です。

一方KPMは、その後に生まれ、

王室の美意識や宮廷文化を磁器として完成させていった窯

という印象があります。

マイセンにはロココの華やかさや東洋趣味が強く出る作品がありますが、KPMでは、のちに新古典主義やベルリンらしい端正な造形も大きな特徴になっていきます。

どちらが上という話ではなく、

背景となる王国と文化が違うから、器の表情も違う

というところが面白いところです。


KPMといえば「王笏マーク」(おうしゃく)

マイセンといえば双剣マーク。

ではKPMは何かというと、コバルトブルーの王笏(セプター)マークです。

KPMでは、磁器が最初の焼成後に厳しい品質検査を通過すると、底面に青い王笏マークが付けられます。これは釉下彩で描かれ、その後釉薬をかけて再び焼成されるため、磁器と一体化します。

このマークも長い歴史の中で少しずつ形が変わってきました。

初期には職人が筆で描いていたため、わずかな個体差もあります。19世紀半ばに模倣が増えた時期には、王室との関係を強調するためプロイセン鷲が使われたこともありました。


絵付け品には、さらに別のマークがある

KPMのバックスタンプは、王笏だけではありません。

1803年以降、絵付けされた磁器には帝国宝珠のような丸い絵付けマークも付けられています。

KPM公式では、

  • 赤:花絵、人物、風景
  • 緑:金彩やプラチナ、モノグラムなど花絵以外
  • 青:高温焼成色
  • 黒:印刷装飾

というように色分けされています。

さらに絵付け師自身の記号も入ります。

つまりKPMも、器の裏を見るとかなり多くの情報が残っている窯です。


KPMの代表作「クアランド」

KPMを代表するシリーズの一つが、KURLAND(クアランド)です。

誕生したのは1790年頃。

クールラント公ペーター・フォン・ビロンの注文によって作られました。

古代ギリシャ・ローマの意匠を取り入れた新古典主義的なデザインで、対称性、節度、端正さが特徴です。KPM公式も、クアランドを製作所を代表する新古典主義のシリーズとして紹介しています。

マイセンの華やかな花絵とはかなり違います。

白磁だけでも、縁に施されたレリーフが光と影を作るので、装飾を抑えても存在感があります。

 


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KPMベルリン 白磁クアランド コーヒーカップアンドソーサ


200年以上前のデザインが今も使える

クアランドの面白いところは、1790年のデザインなのに、現在も古臭く見えにくいことです。

公式では現在も白磁のティーカップやスープカップなどが販売されており、白磁製品の一部は食洗機や電子レンジにも対応しています。 

つまり、王侯貴族のために作られたデザインを、今の食卓でも使えるということです。

ここはセーヴルとの大きな違いとしても面白いところです。

セーヴルはどうしても「美術工芸品」という印象が強いですが、KPMのクアランドには、もっと日常へ近づけやすいモデルがあります。


KPMの花絵もすべて同じではない

KPMというと白磁の端正な印象が強いのですが、花絵も重要です。

KPM公式によると、花、果物、動物、風景などの装飾は現在も多くが手描きです。

しかも完全に型どおりに描くのではなく、モチーフや配置の基本は決まっていても、細部はペインターが解釈して描きます。

そのため、一点一点にわずかな違いが生まれます。

これはマイセンやヘレンドにも通じる部分です。

高級磁器の魅力は、

完全に同じものを大量生産することではなく、一定の品質を保ちながら人の手を残すこと

なのだと思います。


24金も、最後は手仕事

KPMでは金彩も特徴の一つです。

公式によると、24金の装飾は焼成後、瑪瑙の棒などを使って手作業で磨き上げられます。

つまり、金色に見えるだけではなく、焼く、磨く、仕上げるという工程まで含めて職人仕事なのです。


KPMは現在もベルリンで作られている

KPMは過去の王立窯ではありません。

現在もベルリンで磁器を製作しています。

公式では、1763年以来、ベルリンで手作業を中心とした磁器製作を続けていると説明しています。

歴史ある窯なのに、単に昔のシリーズを守るだけではなく、現代的な商品も作っています。

例えばクアランドの意匠を使ったTo-Goカップまで存在します。 

1790年のデザインが、現代の持ち歩きカップにまで展開されている。

このあたりもKPMらしい面白さです。


中古やアンティークを見るならバックスタンプも確認

アンティークのKPMを見るときは、青い王笏マークが大きな手掛かりです。

ただし王笏の形は時代によって変化しています。

さらに、

  • 帝国宝珠マーク
  • 絵付け師の記号
  • 装飾番号
  • その他の製造記号

などが入ることもあります。

ですから、王笏があるかだけでなく、その周囲まで見ることが大切です。


AIにKPMのバックスタンプを見せるなら

今ならスマートフォンで底面を撮ってAIに、

この磁器はKPMベルリンとして販売されています。
王笏マーク、絵付けマーク、数字や記号を確認してください。
KPM公式の歴史的なマークと比較し、年代の候補を挙げてください。
写真だけで真贋は断定しないでください。

と相談することもできます。

ただし、マイセンやヘレンドと同じで、AIは鑑定士ではなく、調べる入口として使うのがいいでしょう。


マイセンだけでドイツ磁器を見ない

ドイツ磁器の歴史を考えると、マイセンはもちろん欠かせません。

でもKPMベルリンまで知ると、もう一つ別の世界が見えてきます。

マイセンにはザクセンの王侯文化。

KPMにはプロイセン王室とベルリン文化。

同じドイツでも背景が違います。

だからこそ、器の形や装飾にも違った個性が出てくるのでしょう。


まとめ

KPMベルリンは、1763年にフリードリヒ大王が創設した王立磁器製作所です。

特徴としては、

  • 王室との深い結びつき
  • 王笏マーク
  • 手描きの絵付け
  • 24金を使った装飾
  • 1790年に生まれたクアランド
  • 現在もベルリンで続く手仕事

があります。 

マイセンが「ヨーロッパ磁器誕生の象徴」だとすれば、

KPMベルリンは、「王室の美意識を形にしたベルリンの磁器」と言えるかもしれません。

次にKPMの商品を見るときは、表の装飾だけでなく、ぜひ裏側も見てみてください。

青い王笏の小さなマークに、260年以上の歴史が残っています。

 

この記事を書いた人

還暦を過ぎてから、AIやスマホを日々の暮らしに取り入れるようになりました。
分からないことはAIに聞き、忘れそうなことはスマホに任せながら、毎日を少し便利に、少し心地よく楽しんでいます。
昔から洋食器やアンティークが好きで、マイセンやヘレンド、英国陶磁器、北欧食器、銀器などの歴史やバックスタンプ、ホールマークを調べることも楽しみのひとつです。
そして、もうひとつ長く楽しんでいるのがウイスキー。
蒸留所や産地、製法、ボトルに込められた歴史を知ると、同じ一杯でも味わい方が変わってきます。
このブログでは、AIを活用しながら、洋食器やウイスキーの歴史や背景を調べたり、日常生活で役立つスマホやAIの使い方を紹介しています。
新しい技術を使って、昔から好きだったものをもっと深く楽しむ。
そんな還暦からの暮らしを、自分自身も学びながら記録しています。

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