マイセン、アウガルテン、ヘレンド、セーヴルと見てきました。
次に取り上げたいのが、リモージュです。
洋食器に興味がある人なら、一度は聞いたことがある名前だと思います。
ところが、
「リモージュというブランドがある」
と思っている人も少なくありません。
実は、これは少し違います。
リモージュはブランド名ではなく、フランスの磁器産地の名前です。
つまり、
「リモージュ焼」という一つの会社があるわけではない
ということです。
リモージュ周辺には数多くの磁器メーカーが生まれ、それぞれが独自の器を作ってきました。
今回は、
なぜリモージュが磁器の一大産地になったのか。
そして、どんなメーカーがあるのか。
そこから見ていきたいと思います。
リモージュ磁器の始まりは「白い土」の発見
ヨーロッパで磁器を作るために欠かせない原料の一つが、カオリンです。
以前、マイセンの記事でも紹介しました。
磁器独特の、
- 白さ
- 硬さ
- 半透明感
を生み出す重要な原料です。
フランスでは1768年、リモージュ近郊のサン=ティリエ=ラ=ペルシュで利用可能なカオリン鉱床が見つかりました。
フランス国立アドリアン・デュブーシェ陶磁器博物館も、1768年にリモージュ近郊でカオリンが発見されたことを、リモージュ磁器の発展につながる重要な出来事として紹介しています。
これによってフランスでも、本格的な硬質磁器を作る条件が整っていきます。
1771年、リモージュ磁器の歴史が始まる
リモージュではその後、磁器生産が本格化します。
ベルナルドの公式史では、1771年にリモージュで最初の硬質磁器が作られたと説明されています。
つまり、
マイセンがヨーロッパで磁器製造に成功してから約60年後、フランスのリモージュでも本格的な磁器産業が始まった
という流れです。
なぜリモージュで磁器産業が発展したのか
理由はカオリンだけではありません。
この地域には、
- カオリン
- 水
- 燃料となる森林
など、磁器生産に必要な条件がそろっていました。
ベルナルドも、リモージュが磁器産地として発展した背景について、カオリン、水、森林がそろっていたことを挙げています。
原料がある。
燃料がある。
水もある。
そこへ職人や工場が集まり、リモージュそのものが磁器産業の街になっていきました。
「リモージュ」は窯の名前ではない
ここが今回、一番大切なところです。
例えば、
マイセン
ヘレンド
アウガルテン
は、それぞれ特定の製作所やブランドです。
ところが、リモージュは違います。
リモージュはフランス中部の都市・地域です。
ですから、
「リモージュのカップを持っている」
と言っても、
それだけではどのメーカーの製品なのかは分かりません。
例えば「有田焼」と少し似ている
日本で考えると分かりやすいかもしれません。
「有田焼」と言っても、一つの会社だけが作っているわけではありません。
複数の窯元があります。
リモージュも、それに少し近い考え方ができます。
リモージュという産地の中に、さまざまなメーカーや工房が存在する。
だから、アンティークのリモージュを見るときは、
「Limoges」と書いてあるか
だけではなく、
「その横にどんなメーカー名があるか」
を見ることが大切になります。
現在は「リモージュ」の名称も保護されている
現在では「Porcelaine de Limoges(リモージュ磁器)」という名称は、フランスの地理的表示として保護されています。
INPI(フランス国立産業財産庁)によると、リモージュ磁器は2017年12月に地理的表示として正式に認定されました。対象となるのは、定められた仕様に従い、オート=ヴィエンヌ県内で製造・装飾された磁器です。
つまり現在は、
どこで作った磁器でも自由に「リモージュ」と名乗ってよい
というわけではありません。
リモージュの代表メーカー① アビランド
リモージュを代表するメーカーとして、まず名前が挙がるのが、
Haviland(アビランド)
です。
その歴史は少し面白いです。
創業者のデヴィッド・アビランドは、もともとアメリカ・ニューヨークで陶磁器の輸入業をしていました。
そしてリモージュ磁器の白さと品質に魅了され、1842年にリモージュへ移住し、自ら製作所を立ち上げます。アビランド公式も、1842年にデヴィッド・アビランドがリモージュで製作所を設立したとしています。
これはかなり面白い話です。
フランスの磁器文化に、アメリカ人が大きく関わった
わけです。
アビランドはアメリカ市場でも人気に
アビランドは、リモージュ磁器をアメリカへ広める大きな役割を果たしました。
そのため、今でもアンティーク市場では、
アメリカの家庭からアビランドの食器が多く出てくる
ことがあります。
花柄。
金彩。
白磁を生かした優しい装飾。
リモージュらしい上品さを感じるメーカーの一つです。
リモージュの代表メーカー② ベルナルド
もう一つ重要なのが、Bernardaud(ベルナルド)です。
ベルナルドの歴史は1863年に始まります。
現在もリモージュで磁器を作り続けている代表的なメーカーで、
- テーブルウェア
- 花瓶
- オブジェ
- 現代アートとのコラボレーション
など、非常に幅広い製品を作っています。
ベルナルド公式によると、現在もリモージュとその周辺の工場で製造を続けています。
ベルナルドは「伝統だけ」のメーカーではない
面白いのは、
古典的なリモージュ磁器を守りながら、現代デザインにも積極的
なところです。
ベルナルドは、
磁器は伝統工芸であり、産業であり、芸術でもある
という考え方で、今も新しいデザインや技術を取り入れています。
だから商品を見ると、いかにもクラシックな花柄だけではありません。
非常にモダンなものもあります。
リモージュ磁器は「古いもの」だけではない
リモージュというと、
アンティーク。
金彩。
花柄。
そんなイメージを持つ人も多いと思います。
でも現在も、実際に日常使いできる磁器が作られています。
ベルナルドではホテルやレストラン向けの器も製造しており、家庭用だけでなくプロの料理人にも使われています。
つまりリモージュは、
博物館の中だけに残った磁器文化ではありません。
現在進行形の産業です。
アンティークのリモージュを見るときは「裏」が面白い
ここからがアンティーク好きには楽しいところです。
リモージュ磁器の底を見ると、
Limoges France
という文字が入っていることがあります。
でも、それだけではメーカーは分かりません。
そこにさらに、
- Haviland
- Bernardaud
- France
- Limoges
- 工房名
- 装飾業者のマーク
などが入っていることがあります。
リモージュでは「素地」と「絵付け」が別の場合もある
ここは少し複雑です。
リモージュでは、白磁を作る工場と、その白磁に絵付けをする工房が別だったケースがあります。
そのため、一つの器に複数のバックスタンプがあることもあります。
例えば、白磁のメーカー印と、装飾工房の印です。
だからリモージュは、裏面を見るだけでもかなり奥が深いのです。
「Limoges France」と書いてあるだけで高価とは限らない
ここは注意したいところです。
リモージュは産地名なので、
リモージュ製=すべて高級アンティーク
ではありません。
価格は、
- メーカー
- 年代
- 絵付け
- 希少性
- 保存状態
- シリーズ
- 手描きか転写か
- 金彩の状態
などで大きく変わります。
つまり、
「Limogesと書いてあるから高価だろう」
とは限りません。
AIでリモージュのバックスタンプを調べる
ここでもAIは役立ちます。
例えば器の裏面を撮影して、
このバックスタンプはリモージュ磁器のものと思われます。
メーカー名、装飾工房、年代の候補を分けて整理してください。
断定せず、確認に必要な資料も教えてください。
と聞いてみます。
これなら、
「これは何だろう?」
というところから調査を始められます。
ただしAIだけで真贋や価値は決めない
ここはマイセンやヘレンドと同じです。
バックスタンプだけでは、
- 真贋
- 正確な年代
- 市場価値
まで判断できないことがあります。
特にリモージュはメーカーも装飾業者も多いので、
AIは鑑定ではなく、調べるための案内役
として使うのがいいと思います。
楽天やYahoo!の商品画像を見るのも勉強になる
以下楽天市場の商品広告です。
Haviland
|
|
Bernardaud
|
|
楽天市場でもアンティーク物が販売されています。未使用品では無いという事なので、ご購入を検討される場合は、傷・シミ・直した跡が無いか慎重に見る事が大切です。
アンティークのお品は、逆に小傷・シミが程よく時代を感じさせるので、そこが魅力だという方もいらっしゃいますけどね。
「リモージュ」という言葉の意味が分かると見方が変わる
洋食器を見ていると、
「これはリモージュです」
という説明を見かけることがあります。
以前なら、
「リモージュというメーカーなんだ」
と思ってしまうかもしれません。
でも実際には、「リモージュという産地で作られた磁器」です。
そこからさらに、
どのメーカーなのか。
どの時代なのか。
誰が絵付けしたのか。
と見ていく。
ここまでくると、ただの食器だったものが、その土地の産業や歴史を背負ったものに見えてきます。
まとめ
リモージュはブランド名ではありません。
フランスを代表する磁器産地です。
1768年にリモージュ近郊でカオリンが発見され、その後1771年には硬質磁器の生産が始まりました。
そこから多くのメーカーが生まれ、
アビランド
ベルナルド
など、現在まで続く有名ブランドへ発展していきます。
そして現在、「リモージュ磁器」という名称自体も地理的表示として保護されています。
ですから次にアンティークショップで、
Limoges France
というバックスタンプを見つけたら、
そこで終わりではありません。
むしろ、そこからが調べる楽しみの始まりです。
このあたりが、リモージュ磁器の面白さだと思います。
