マイセン、アウガルテンとヨーロッパの磁器をたどってきました。
次に紹介したいのが、ハンガリーを代表する磁器窯、ヘレンドです。
ヘレンドというと、
鮮やかな花。
蝶。
鳥。
金彩。
そして少し東洋的な絵柄。
マイセンやアウガルテンとは、また違った華やかさがあります。
私も洋食器を見るのが好きですが、ヘレンドは遠くから見ても、
「これはヘレンドらしいな」
と感じる独特の世界があります。
ところが最近、ヘレンドについて気になる話もあります。
それが、
「ネットオークションなどに偽物や粗悪品が出回っている」
という問題です。
単なる噂なのかと思って調べてみると、これはヘレンド・ジャパン自身が公式サイトで注意を呼びかけています。国内外のインターネットオークション等で偽物や粗悪品が出回っているとの報告があり、非常に精巧なものについては、ネット上の画像だけでは判断が困難な場合もあるとしています。
今回はまず、
ヘレンドとはどんな窯なのか。
そして後半では、
中古やネットで購入するとき、何に気をつければいいのか。
そこまで見ていきたいと思います。
ヘレンドの始まりは1826年
ヘレンドの歴史は、1826年にヴィンツェ・シュティングルがハンガリーのヘレンド村で前身となる工房を設立したところから始まります。
ただし、現在私たちが思い浮かべる華やかなヘレンドへ発展していくうえで、非常に重要な人物がいます。
モール・フィッシャーです。
1839年、フィッシャーが経営を引き継ぎます。
彼は、単純に大量生産するのではなく、品質の高い磁器を作り、ヨーロッパの上流階級にも認められる窯を目指しました。ヘレンド公式の歴史でも、フィッシャーの時代に国際的な水準の高品質な磁器を追求し、製作所が大きく発展したとされています。
※画像はAIにて生成したものです。実際のものとは一切関係はありません。
ヘレンドを世界に知らしめた「ヴィクトリア」
ヘレンドの名前を世界に広めた大きな出来事が、1851年のロンドン万国博覧会です。
そこで展示された華やかな東洋趣味のディナーセットが評価され、英国のヴィクトリア女王が注文しました。
その絵柄は、後に女王の名を取って、
「ヴィクトリア」
と呼ばれるようになります。
現在でもヘレンドを代表するシリーズの一つです。
ヴィクトリアはなぜこんなに華やかなのか
ヴィクトリアを見ると、まず目に入るのが、
蝶と花です。
ヘレンド公式では、ヴィクトリアの装飾には約100種類にも及ぶ蝶や花枝のモチーフが使われていると説明しています。
しかも、単なるヨーロッパの花柄という感じではありません。
どこか中国磁器や日本磁器を思わせるような、東洋趣味があります。
ここでも、以前紹介したマイセンと同じように、
ヨーロッパの磁器文化と東洋の磁器文化がつながっている
ことが分かります。
もう一つの人気柄「アポニー」
ヘレンドでもう一つ有名なのが、アポニーです。
ヴィクトリアが非常に華やかなのに対し、アポニーは比較的すっきりしています。
ヘレンド公式資料によると、アポニーは「インドの華籠」と呼ばれる複雑な絵柄をもとに、その中心となる花を大きく取り出して簡略化したデザインです。
だから、
華やかなヘレンドは好きだけれど、ヴィクトリアは少し派手かな
という人にも選びやすいシリーズだと思います。
緑、ピンク、オレンジ、青など、色違いも多くあります。
ヘレンド公式では現在、アポニーに多数のカラーバリエーションが存在すると紹介しています。
ヘレンドは今も「手描き・手作り」
ここもヘレンドの大きな特徴です。
ヘレンド・ジャパンは、1826年の開窯以来、マスター制度を基礎に職人が一つ一つ手描き・手作りで製作していると説明しています。
ここは、前に紹介したマイセンとも共通します。
高級磁器の価値は、
有名なブランド名が付いているから
だけではありません。
長年積み重ねた技術を、人から人へ受け継いでいる。
そこに大きな価値があります。
手描きだから、全部が完全に同じではない
ここは、ヘレンドを見るときに覚えておきたいところです。
手描きなら、
筆の線。
花の形。
色の濃淡。
蝶の向き。
細かな部分に、わずかな違いが生まれます。
ですから、
「絵柄が少し違う=偽物」
と単純には言えません。
逆に、
「バックスタンプが似ている=本物」
とも言い切れません。
このあたりが真贋を見る難しさです。
ヘレンド・ジャパンが「偽物」に注意を呼びかけている
ヘレンド・ジャパン公式サイトには、はっきりと、
国内外のインターネットオークションサイトなどで、ヘレンドの偽物や粗悪品が出回っているとの報告がある
という注意書きがあります。
さらに、
精巧に作られた偽物や粗悪品は、ネットに掲載されている写真だけでは判断が難しいものも多い
とも説明しています。
つまり、
「写真を見れば簡単に分かる」
という世界ではありません。
これはかなり重要です。
では、バックスタンプを見れば本物か分かる?
アンティーク食器が好きなら、まず裏を見たくなります。
ヘレンドにもバックスタンプがあります。
当然、大切な確認材料です。
しかし、
バックスタンプだけで真贋を断定するのは危険
です。
精巧な偽物なら、マークそのものを真似している可能性もあります。
そのため購入するときには、
- バックスタンプ
- 絵付け
- 金彩
- 素地
- 器の形
- シリーズの特徴
- 商品番号やパターン
- 販売店
- 購入経路
などを総合して考える必要があります。
特にネット購入では販売店を見る
これはヘレンド・ジャパンもかなり明確です。
オークション、並行輸入店、海外店舗などで購入した商品の真偽について、ヘレンド・ジャパンでは回答できないとしており、不明点は購入した店へ直接問い合わせるよう案内しています。
つまり高額なヘレンドを買うなら、
「商品だけを見る」のではなく「誰が売っているのかを見る」
ことも重要です。
例えばネットショップなら、
- 運営会社が明確か
- 実店舗があるか
- 商品説明が詳しいか
- 底面写真があるか
- 中古なら傷や補修について説明しているか
- 返品条件が明記されているか
なども見たいところです。
安すぎるヘレンドには一度立ち止まる
欲しかったヴィクトリアが、
相場より極端に安い。
そんな商品を見ると、つい欲しくなります。
もちろん、
中古品。
小さな傷。
箱なし。
並行輸入品。
など、価格が安い正当な理由もあります。
だから、
安い=偽物ではありません。
でも、
「なぜこの値段なのだろう?」
と一度確認する癖は持っておいた方がいいと思います。
AIに真贋を見てもらえる?
ここで、このブログらしくAIも使ってみます。
例えば、商品全体とバックスタンプの写真をChatGPTに見せて、
この器はヘレンドとして販売されています。
シリーズ名、絵柄、バックスタンプについて、ヘレンド公式情報と比較してください。本物か偽物かを写真だけで断定せず、
・一致している特徴
・気になる特徴
・追加で撮影すべき場所
・販売店へ確認すべきことを教えてください。
という使い方です。
これはかなり役立つと思います。
ただし、「AIが本物と言ったから買う」は避けます。
ヘレンド・ジャパン自身が、精巧な偽物はネット画像だけでは判断困難としている以上、AIにも同じ限界があります。
AIは、鑑定士ではなく調査助手として使う。
このくらいがちょうどいいと思います。
ヘレンドは「華やかな食器」で終わらない
私がヘレンドで面白いと思うのは、
単に華やかだからではありません。
1826年の小さな工房。
モール・フィッシャーによる発展。
1851年のロンドン万国博覧会。
ヴィクトリア女王。
そして現在まで続く手描きの文化。
そこまで知ると、一客のカップにもずいぶん長い物語があることが分かります。
まとめ
ヘレンドは1826年にハンガリーで始まり、モール・フィッシャーの時代に大きく発展しました。1851年のロンドン万国博覧会では、後に「ヴィクトリア」と呼ばれる絵柄が英国ヴィクトリア女王に注文され、国際的な名声を高めます。
そして現在でも、手描き・手作りを大切にする磁器製作所です。
一方で、ヘレンド・ジャパンはネットオークション等における偽物・粗悪品について公式に注意を呼びかけています。
だからこそ、
安いか高いかだけでなく、本物の絵柄を知ること。
バックスタンプだけに頼らないこと。
そして、どこから買うのかを見ること。
も大切になってきます。
洋食器は、知識が増えるほど選ぶ楽しみも増えます。
そして今なら、その調べ物にAIも使える。
昔から受け継がれてきた磁器を、最新のAIを使いながら調べる。
この楽しみ方は、これからますます面白くなっていきそうです。



